今日8月6日、午前8時15分。広島に原子爆弾が落とされてから、78年となった。例年記している、この1年間に新たにおさめられた死没者名簿の人数は5,320人、名簿にお名前がある方の総数は、339,227人になったという。この人数は、死没者名簿にお名前がある方の数であり、原爆投下直後の惨状のもと、生死の確認が取れていない方も多い。
今日の広島市平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)のNHKの放送では、2歳の時に被爆して十年後に原爆症(白血病)を発症して亡くなられた佐々木禎子さんのことが紹介され、禎子さんの親友だったという女性が禎子さんのことを話された。スポーツが得意な少女だったと伝えられる禎子さんは、リレーの走者としてぐいぐい差を広げてチームを優勝に導いたそうだ。また中学へ入学しながら登校できず、入院したまま亡くなった禎子さんは「中学校はどんなところか」としきりにたずねておられたという。その禎子さんのことを後世に伝えようと、彼女が在籍された広島市立幟町(のぼりちょう)中学校の級友たちの呼びかけが広まって建立されたのが「原爆の子の像」であり、「鶴を千羽折れば願いがかなう」と信じて禎子さんが薬の包み紙で折ったという鶴の形が模してあって、世界中から贈られた千羽鶴がその周囲にささげられている。
広島市の松井一實市長の平和宣言では、「核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要があるのではないでしょうか」と明確に核廃絶を呼びかけた。さらに今年は日曜日であるためか、式典の終了まで中継されたので、広島県の湯崎英彦知事のあいさつを聞くことができた。印象的だったのは、「核抑止論者」に対する直接的な問いかけである。
湯崎知事は、「(前略)なお世界には、核兵器こそが平和の維持に不可欠であるという、積極的核抑止論の信奉者が存在し、首脳たちの示す目標に向けた意志にかかわらず、核軍縮の歩みを遅らせています。」と断じた上で、「私は、そのような核抑止論者に問いたい。」として、次のように呼びかけた。
「あなたは、今この瞬間も命を落としている無辜(むこ)のウクライナの市民に対し、責任を負えるのですか。ウクライナが核兵器を放棄したから侵略を受けているのではありません。ロシアが核兵器を持っているから侵略を止められないのです。核兵器国による非核兵器国への侵略を止められないという現在の状況は、『安定・不安定パラドックス』として、核抑止論から予想されてきたことではないですか。
また、あなたは、万が一核抑止が破綻(はたん)した場合、全人類の命、場合によっては地球上の全ての生命に対し、責任を負えるのですか。あなたは、世界で核戦争が起こったら、こんなことが起こるとは思わなかった、と肩をすくめるだけなのでしょうか。」
広島市長、広島県知事の言葉が世界各国の指導者たちに届くことを、強く願う。現実に核兵器保有国の指導者が、核兵器の使用を仄めかす現在であるからだ。
私は二十年前に言問学舎を開塾してから、東京書籍版『新しい国語』中学1年の教科書に掲載されている「碑(いしぶみ)(原形は松山善三構成で1969年に広島テレビ放送が制作したもの)」の授業を毎年行なって来た。さらに今年は、『国語のアクティブラーニング 音読で育てる読解力』シリーズの内容上の完結編として「小学5年生以上対象3」を刊行し(2023年8月1日発行)、広島と長崎の原爆のこと、戦没学徒のことを子どもたちに伝える文章を書いて掲載した。真の国語を学ぶ中で、子どもたちに大切なことを学んでもらうためである。本日、この文章のタイトル、「忘れまい、八月六日の広島の朝を」は、同書の中で広島について書いた文章のタイトルである。実際に言問学舎の授業でその文章を使いはじめており、少人数の塾での指導、また少部数の刊行ではあるが、少しずつでも、純真で想像力豊かな子どもたちに、かつて自国の戦争でどんなことがあったのかを知り、自分たちの未来のために考える力を養ってほしいと願っている。
令和5(2023)年8月6日
小田原漂情
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言問ねこ塾長日記
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