言問ねこ塾長日記

言問学舎舎主・小田原漂情のブログです。

Vol.321 国語のアクティブラーニング 音読で育てる読解力の完結編を出版!

2023年08月08日

 かねて本ブログおよび「ひろく一般のみなさまへ」でご案内して来た通り、言問学舎では2019年3月より、「真の国語」の理念を体現する『国語のアクティブラーニング 音読で育てる読解力』高学年用(小学5年生以上対象)、中・低学年用(小学2年生〜4年生対応)各2巻を刊行して来た。途中コロナ禍への対応のため計画より遅れたことは否めないが、このほど内容としての完結篇となる「小学5年生以上対象3」を刊行した次第である(2023年8月1日発行)。すでに従来配本のある書店へは送られているほか、Amazon等ネット書店での注文も可能であり、言問学舎店頭での販売も開始している。

 今回、特に志したのは、「真の国語」を学んでもらう中で、大切なことを知ってもらうことである。それは、自分たちの国の前世紀、まだ百年に満たぬ近い過去にどのようなことがあったか(本書で具体的に書いているのは広島、長崎の原爆と、「きけわだつみのこえ」が実情を伝えている戦没学徒のこと)を知り、その上で自分たちの将来のために、そうした過去とどうやって向き合うかを考えること、その土台を作ってもらうことである。

 戦没学徒に関しては、文京区本郷5丁目にある「わだつみのこえ記念館」へお邪魔して、理事長先生のお話を伺った上で取材をさせていただいた。大学生として「考えること」に打ちこんでいた方たちが逃れ得ぬ死への道に直面し、考え抜いたこと、そしてその中でも愛する人への思いを深く抱きつづけていたことなどを、子どもたちにわかるように書きつづった。
 
 広島の原爆については東京書籍版『新しい国語』中学1年用教科書に掲載されている「碑(いしぶみ)」の県立広島二中の1年生のこと、『はだしのゲン』のこと、そして2歳で被爆し、十年後に白血病を発症して、亡くなられた佐々木禎子さんのことを書かせていただいた。8月5日からその文章を使って授業をしているが、広島の原爆のことをある程度知っていた子も、自分たちと年代の近かった広島二中の生徒たちや禎子さんのことを新たに知り、心に深く受けとめた感想を、つづっている。まずは言問学舎の中から、本書の志す「真の国語を学ぶ中で、大切なことを知ってもらう」営みを実践し、少しずつでも広めていきたい。

 また長崎の原爆については、ご自身が白血病であり、さらに原爆投下の際の火傷や原爆症の身をおして被爆者の治療にあたられた永井隆博士のこと、私自身は城山小学校平和祈念館の展示で拝見した、晴れ着姿に薄化粧を施して荼毘(だび)に付された二人の少女のこと(松添博氏の「悲しい別れ−荼毘」)について紹介させていただいた上に、1949(昭和24)年に藤山一郎先生がお歌いになった「長崎の鐘」(古関裕而作曲、サトウハチロー作詞)を、永井隆博士の短歌に藤山一郎先生が作曲された「新しき」とともに歌わせていただいて、DVDに収録してある(「長崎の鐘」「新しき」の歌唱動画は本年9月19日までYou Tubeで公開した。いずれもJASRAC、日本コロムビア許諾済み)。広島、長崎とも、2022年3月10日から12日にかけて取材し、多くの方々のご助力を賜った。

 この「言問ねこ塾長日記」でも、「国語のアクティブラーニング 音読で育てる読解力」について、計画段階からお話しさせていただき、多くの方のお目通しを賜って来た。刊行順としては、まだ「小学2年生〜4年生対応3」の刊行が来年春に控えてはいるが、内容順、学習者の学習順としては、今回の「小学5年生以上対象3」がシリーズの「完結篇」となる。これまでのご注視、ご支援に感謝しつつ、シリーズの一区切りのご報告をさせていただきたいと考えて、この一文をしたためた次第である。

★本書の概要は以下の通りです。Amazonはじめネット書店からの注文も可能です。言問学舎店頭でもお求めいただけます。

【表紙01】登録用 (002).jpg

発売日:2023年8月1日発行
言問学舎版
A4判 154ページ
ISBN:978-4-9910776-8-5

目次 はじめに 
   本を読むということ
生きていてよかった
「わだつみのこえ記念館」をたずねて
藤袴胸に刻むの記
忘れまい、八月六日の広島の朝を
「長崎を最後の被爆地に」
「長崎の鐘」・「新しき」歌詞
あとに 

★また、本年8月31日まで、本書と真の国語理念を広めるためのクラウドファンディング 「真の国語力をはぐくみ、大切なことを伝える本を広めたい!」を実施中です。よろしくお願い申し上げます。                                  
https://camp-fire.jp/projects/view/691075?list=projects_fresh
クラファントップ画像.png

◇電話番号は以下の通りです。 
 03‐5805‐7817 舎主・小田原漂情までお願いします。
 メールはフォームよりお願いします。

言問学舎の生のすがたは、こちらの動画からもご覧いただけます!
https://www.youtube.com/watch?v=c2OdlIl8T44

国語の勉強をお手伝いする国語専門サイト・国語力.com
http://www.kokugoryoku.com
posted by hyojo at 23:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 言問ねこ塾長日記

Vol.320 忘れまい、八月六日の広島の朝を

2023年08月06日

 今日8月6日、午前8時15分。広島に原子爆弾が落とされてから、78年となった。例年記している、この1年間に新たにおさめられた死没者名簿の人数は5,320人、名簿にお名前がある方の総数は、339,227人になったという。この人数は、死没者名簿にお名前がある方の数であり、原爆投下直後の惨状のもと、生死の確認が取れていない方も多い。

 今日の広島市平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)のNHKの放送では、2歳の時に被爆して十年後に原爆症(白血病)を発症して亡くなられた佐々木禎子さんのことが紹介され、禎子さんの親友だったという女性が禎子さんのことを話された。スポーツが得意な少女だったと伝えられる禎子さんは、リレーの走者としてぐいぐい差を広げてチームを優勝に導いたそうだ。また中学へ入学しながら登校できず、入院したまま亡くなった禎子さんは「中学校はどんなところか」としきりにたずねておられたという。その禎子さんのことを後世に伝えようと、彼女が在籍された広島市立幟町(のぼりちょう)中学校の級友たちの呼びかけが広まって建立されたのが「原爆の子の像」であり、「鶴を千羽折れば願いがかなう」と信じて禎子さんが薬の包み紙で折ったという鶴の形が模してあって、世界中から贈られた千羽鶴がその周囲にささげられている。 

原爆の子の像.jpg

 広島市の松井一實市長の平和宣言では、「核による威嚇を行う為政者がいるという現実を踏まえるならば、世界中の指導者は、核抑止論は破綻しているということを直視し、私たちを厳しい現実から理想へと導くための具体的な取組を早急に始める必要があるのではないでしょうか」と明確に核廃絶を呼びかけた。さらに今年は日曜日であるためか、式典の終了まで中継されたので、広島県の湯崎英彦知事のあいさつを聞くことができた。印象的だったのは、「核抑止論者」に対する直接的な問いかけである。

 湯崎知事は、「(前略)なお世界には、核兵器こそが平和の維持に不可欠であるという、積極的核抑止論の信奉者が存在し、首脳たちの示す目標に向けた意志にかかわらず、核軍縮の歩みを遅らせています。」と断じた上で、「私は、そのような核抑止論者に問いたい。」として、次のように呼びかけた。
 「あなたは、今この瞬間も命を落としている無辜(むこ)のウクライナの市民に対し、責任を負えるのですか。ウクライナが核兵器を放棄したから侵略を受けているのではありません。ロシアが核兵器を持っているから侵略を止められないのです。核兵器国による非核兵器国への侵略を止められないという現在の状況は、『安定・不安定パラドックス』として、核抑止論から予想されてきたことではないですか。
 また、あなたは、万が一核抑止が破綻(はたん)した場合、全人類の命、場合によっては地球上の全ての生命に対し、責任を負えるのですか。あなたは、世界で核戦争が起こったら、こんなことが起こるとは思わなかった、と肩をすくめるだけなのでしょうか。」

 広島市長、広島県知事の言葉が世界各国の指導者たちに届くことを、強く願う。現実に核兵器保有国の指導者が、核兵器の使用を仄めかす現在であるからだ。

 私は二十年前に言問学舎を開塾してから、東京書籍版『新しい国語』中学1年の教科書に掲載されている「碑(いしぶみ)(原形は松山善三構成で1969年に広島テレビ放送が制作したもの)」の授業を毎年行なって来た。さらに今年は、『国語のアクティブラーニング 音読で育てる読解力』シリーズの内容上の完結編として「小学5年生以上対象3」を刊行し(2023年8月1日発行)、広島と長崎の原爆のこと、戦没学徒のことを子どもたちに伝える文章を書いて掲載した。真の国語を学ぶ中で、子どもたちに大切なことを学んでもらうためである。本日、この文章のタイトル、「忘れまい、八月六日の広島の朝を」は、同書の中で広島について書いた文章のタイトルである。実際に言問学舎の授業でその文章を使いはじめており、少人数の塾での指導、また少部数の刊行ではあるが、少しずつでも、純真で想像力豊かな子どもたちに、かつて自国の戦争でどんなことがあったのかを知り、自分たちの未来のために考える力を養ってほしいと願っている。

令和5(2023)年8月6日
小田原漂情

★マイベストプロ東京/言問学舎における紹介ページ
https://mbp-japan.com/tokyo/kotogaku/column/5141602/
posted by hyojo at 23:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 言問ねこ塾長日記

Vol.319 スーパー読解『舞姫』クラウドファンディング

2023年06月08日

(ご報告とお願いのため、敬体で記します。今までの318回の中で、2、3回はあるはずです。)

 言問学舎ではこのほど、主として高校3年生に森鷗外の『舞姫』をわかりやすく、かつ深く学んでもらえる「スーパー読解『舞姫』」を発行致しました。制作資金の一部に充てるためクラウドファンディングを5月11日より募集してまいりましたが(「CAMPFIRE」にて)、6月14日の締め切りまで、あと3日となりました。

特装本.jpg
クラウドファンディングリターン専用特別装丁本

 本書を用いた授業を、すでに開始しておりますが、生徒たちの反応からみられる『舞姫』指導上のポイントと本書の特長は、以下のようなところです。

 たとえばドイツの大学に留学した豊太郎が、「自由なる大学の風にあたりたればにや(自由な大学の空気の中で生きてきたためだろうか)」、「きのふまでの我ならぬ我を攻むるに似たり(昨日までの自分でない自分を責めるように思われる)」というくだりは、豊太郎(もしくは鷗外)が「自我に目覚める」作品といわれる根拠となる部分ですが、「そのような心境に至ったのはなぜだと思うか」とたずねてみると、スパッと答えることはなかなか難しいようです。

 「スーパー読解『舞姫』」では、この部分の模範解答(記述例)を次のように示してあります。
<日本の封建的社会の空気の中で育った豊太郎だから、生きる道も、学問も仕事も、すべて家、親、上司から与えられるものを忠実に処理するだけの「昨日までの自分でない自分」であったが、西欧の大学の自由な空気の中で自己の存在を第一義に考える「自由」を知り、自分自身が本当に生きる道を見つけるべきだと思うようになったから。>

 また、この少しあとに出て来る豊太郎の「弱く、ふびんなる心」なども、深く注意を向けずに読みすすんでしまう生徒も、少なからずいるようです。

 逐語的な解釈を順々にすすめるだけでなく、こうした作品全体にかかわる重要部分を手がかりとして差し出し、深く考えさせた上で模範解答(記述例)を示して十全の理解をはかる、それが「スーパー読解『舞姫』」の特色です(逐語的な解釈については、編著者小田原漂情自身の手による全文現代語訳を付してあります)。

 言問学舎の刊行物ですから、高校3年生を主対象とする国語教材となってはおりますが、かつて『舞姫』を読んで心に残った大学生以上の年代の方にも、楽しんでいただける本になっています。終盤にきてご支援が増えておりますが、率直に言って目標額到達までにはまだかなりの道のりがあります。最後の3日間、ぜひみなさまのご支援をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

https://camp-fire.jp/projects/view/671016?utm_campaign=cp_po_share_c_msg_backers_index
クラウドファンディングCAMPFIRE 「スーパー読解『舞姫』」
posted by hyojo at 23:21 | Comment(0) | TrackBack(0) | 言問ねこ塾長日記