言問ねこ塾長日記

季節講習会のご案内をしてまいります。

Vol.266 桜と「業平」のことなど

2017年03月23日

 一昨日、かねて予想されていた通り、東京がことし全国で一番早く、ソメイヨシノ開花の観測地となったそうである。桜の季節ともなれば、誰もが心浮き立つものであろうが、やはり歌人のはしくれである私としては、短歌、文学の観点から、桜のことを考える習慣が根づいている。そしていく度か書いているため今回は詳細を省くけれど、桜と言えば在原業平の<世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし>の歌を、この時期にはどうしても思ってしまう。

 また先日、東京大空襲と東日本大震災のことで一文を認めた際、言問橋についても言及した。在原業平であろうという『伊勢物語』の主人公が、いまの白鬚橋付近とされる「すみだ川」のほとりで<名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと>の歌を詠んだと書かれているのは、同書の「東下り」の章だが、この章では冒頭の方に、やはり有名な、次の一首が挙げられている。

 から衣きつつなれにしつましあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ

 この歌は、「かきつばた」の五文字を、「初句、二句、三句、四句、結句」それぞれのはじめに読みこんでいる(折句)ほか、序詞、掛詞、縁語といった和歌の技法をたくさん盛りこんだ歌としても、よく知られていよう。

 詠まれたのは、三河国(現在の愛知県東部)の八橋というところ(愛知県知立市)だとされており、授業で生徒たちに教える時、私自身がかつて親しんだそのあたりの土地の様子なども織り交ぜて、話している。かつて親しんだ、とは、四半世紀も前になる平成2年(1990年)から平成7年(1995年)にかけての5年間、当時勤めていた出版社の転勤で、名古屋に住んでいたことによるのだが、このほどちょっと急用ができて、その名古屋へ行くこととなった。

 翌日は時間がありそうなので、この三河国の八橋、業平が<から衣・・・>の歌を詠んだ地をたずねようかなどと、いま、ちょっと考えているところである。無事にそこを歩くことができ、業平の心について感じるところをまとめることができたら、いつかまた当ブログで、お話ししてみたいと思う。



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Vol.265 3月10日、そして11日

2017年03月10日

 今日3月10日は、72年前の1945年(昭和20年)、アメリカ軍のB29爆撃機の大編隊による深夜の無差別爆撃で、都内の下町地区が壊滅的な被害を受け、10万人以上の死者・行方不明者を出した日である。10日の夜ではなく、9日から日付が変わったばかりの10日の午前が、空襲を受けた時間帯で、一般にこの空襲を「東京大空襲」と呼ぶ。

 言問学舎ホームページの中でも触れているが(「会社概要」の中の、「言問学舎のゆかり」)、最寄りの本郷弥生交差点から言問通りを東進すると、隅田川に言問橋が架けられている。在原業平の「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」の名歌の出て来る『伊勢物語』で一行が川を渡ったのが、このあたりなのかと推察されるが(※)、東京大空襲の夜、猛火に追われてこの橋の上にたくさんの人が避難して動きが取れなくなり、焼夷弾はそこにも投下されて、橋の上で折り重なるように焼死したり、川に飛び込んで水死したりした人のなきがらが、あたりを埋めつくしたと言われている。

 「言問学舎」として「言問」の名を負う以上、私はこのことを忘れぬばかりでなく、ずっと語り伝えて行かねばならぬと、心に決めている。そして戦争は、つねに無辜(むこ)の民に犠牲を強い、大きな悲劇を生む。そのことも、今日(こんにち)ますます声を大にして、伝えて行かなければならないことである。戦後に生まれ、平和な時代に生きて来られた私たちの、それは必然たる責務であろう。

 そして明日は、3月11日である。月並みな言い方ではあるが、あの大きな揺れがつづいた時間のことは、今でも鮮明に覚えている。その日は塾に泊り込んだ。翌日帰宅する際に、海岸の松並木を超えて押し寄せる津波の写真をはじめて目にし、ようやく事態の深甚さを知った時の驚きと悔しさ(解説は省くが、犠牲になった方々のことを思ったその時の感情には、「悔しさ」という言葉がもっとも合っているのである)も、また終生忘れることはないだろう。

 私は文学の中に鉄道を取りこむことを、テーマの一つとしている。その視点から、ずっと不通になっていた常磐線の小高‐浪江間の運転再開が近づき、常磐線全線の再開にも見通しがついて来たことと、当時の沿岸の鉄道各線の状況とを思うと、ある種の感動を禁じ得ないし、関係各位のご労苦には、頭を垂れるのみである。私自身のなすべきことも、半分は終えたが、半分は道半ばにも至っていないことをいま一度ふり返り、ふたたびなすべきことのために行動すべく、誓いを新たにしたいと思う。

 今年は、今日、このことを記し終えて、筆を置きたい。

平成29年3月10日
小田原漂情

※その後確認を取り、現在の白鬚橋(しらひげばし)付近にあった「橋場の渡し」とされている(ウィキペディア)、とのことで、訂正します。

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Vol.264 「塾」とは何か?

2017年03月03日

大上段に構えたタイトルだが、「塾」を普通名詞であり、「塾一般の定義」としたなら、幾通りもの言説が成り立ち、どれか一つの正論というものはなくなってしまうから、ここで述べるのは、私が「塾」をどのように考えているかの表明、すなわち私論である。

 そして、タイトルが「問い」だから、「答え」を先にひと言で言ってしまうと、私は「塾」とは、「人を育てるところ」だと考えている。

 もちろん、こんにちの世で求められる現実の「塾」には、世情にあわせたさまざまなニーズがあり、それらに対しては、日々の記事で随時お知らせをさせていただいている。だからここでは、「人」=「子ども」を「育てる」面においての、私の存念を述べさせていただきたい。

 古い話だが、昭和の最後の年(昭和63年=1988年)、私は25歳だったが、最初の転職をした。転職先は学習参考書の出版社で、だからもう30年近く、教育業界で生きて来たことになる。その会社の中途採用の入社試験で、何文字だったか忘れたが短い作文があり、まさに「塾」に対してあなたの思うところを述べて下さい、という設問があったのだ。

 私はその時、「塾とは人を育てるものだと考える。緒方洪庵の『適塾(適々斎塾)』や吉田松陰の『松下村塾』が、有為の人材を多く送り出したように。」という内容の文を書いて出したことを、時々思い出す。めぐり巡ってこの言問学舎をはじめるに至った契機と存念は、必ずしもその通りではないけれど。

 ただ、「学習塾」である言問学舎を経営しながら、やはり「塾」としての本義の過半が「人を育てる」ことにあるのは間違いないと、つねづね思うのも事実である。また適塾や松下村塾を挙げたのは、現実に塾の運営をするようなポジションでのことではなかったからで、昨今よく言われる「リーダーとなりうる人材の育成」などを指針とするのでなく、縁があり、何かを求めている子どもたちの役に立ちつつ、その子たちをしっかり育てて行くことが、私の持ち場であると考える(もちろん「リーダー」の資質を持つ子を伸ばすことにも、十分魅力を認めるものではある)。

 小学生から思春期にかけ、子どもたちには壁があり、悩みがあり、それは親御さんたちもまた同様であろう。勉強を教え、学力を高めるのは当然だが、一人一人の成長途上の壁や悩みと向き合って、その上で受験・進学という大きな夢を実現させることに、私と言問学舎の役割があると思うのである。

 時には、なまけたい、あるいは悪ふざけしたい子どもたちにきびしく接する必要もある。それは、「勉強」において、なおさらのことがある。子どもの頃につらい思いを乗り越えて成長することは、生きる上で本当に大きなことだ。漢字をしっかり書く、計算をきちんとする、途中式をこつこつ書く、といったことが、あとの長い実人生で役に立つということなど、当事者である子どもたちにはわからない。だから大人が、うまくそうしたことを習慣化させてやることも、重要なのだ。

 また、「国語の力」をできるだけ多くの子どもたちに伝えることが、いま一つの大きな役割である。本を読むことで、いろいろな人の考えを知ることができるということは、古来言われている国語のすぐれた特性の一つだが、言葉の持つ音韻が、極言すれば人を救い、生かし、力を与えるということをも、具現化して子どもたちに手渡したい。以上を総合したものが言問学舎の「塾」としての姿であり、私の考える「塾」のスタイルという、標題の問いに対する答えである。

※明日・明後日と、「春期講習&新学期説明会」を開催します。詳細はリンクにてご覧下さい。
http://blog5.kotogaku.co.jp/article/178926136.html

◇電話番号は以下の通りです。 
 03‐5805‐7817 舎主・小田原漂情までお願いします。
 メールはフォームよりお願いします。

言問学舎の生のすがたは、こちらの動画からもご覧いただけます!
https://www.youtube.com/watch?v=c2OdlIl8T44

国語の勉強をお手伝いする国語専門サイト・国語力.com
http://www.kokugoryoku.com

 
posted by hyojo at 18:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | 言問ねこ塾長日記